スポーツの歴史が好きな僕にとっては非常に楽しい本でした。なかなか時間が取れなかったが、結局1週間くらい、通勤時間の中で読了。
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筆者は後藤健生(ゴタケ)さん。最近JSPORTSのコラムくらいしか読んでないんだけど、この人の本で一番スゴイのは、「日本サッカー史-日本代表の90年」で、日本にサッカーが渡来してから、ワールドカップ2006まで、1冊で書ききっている。資料編もかなり面白く、この本の意見を基に(と思われる)、日本代表のAマッチ認定数が変わったほど。
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で、この「日本サッカー史」のあとがきでも、今回の「国立競技場の100年」のあとがきでも書いてあるのが
国立競技場の通史のような本はどこにもなかった。「そのうち、誰かが書いてくれるだろう」と、何十年も待っていたけれど、そんな本は出版されなかった。
それなら、自分で書くしかない
という部分があったこと ((引用は「国立競技場の100年の方))が面白い。
で、この「国立競技場の100年」は、上記の通り「国立競技場の通史」であって、国立競技場は、いつできたのか、できる前には何があったのか、どうしてココ(神宮外苑)にできたのか、という事が書いてあって、よく考えれば当たり前なのかも知れないが、国立競技場の事を書くと、そもそもスタジアムというのは世界的にいつごろ発明されたのか、スタジアムを使うイベント≒スポーツはどう日本で発展してきたのか、も書かれることになる。
国立競技場ができたのは東京オリンピック(の、前のアジア大会)というのは何となく知っていたのだが、それより前に「明治神宮外苑競技場」という競技場が存在していて、それは明治神宮造成の一環でできた、というのは知らなかった。そして、明治神宮外苑競技場の頃は、まだ陸上トラックが1周400mと決まってなかった、というのは意外な真実だった。また、イベント≒スポーツとしても、「明治神宮大会」という大会が戦前に行われていたこと、開催にあたって駆け引きがかなりあったこと、も意外だった。個人的には避けがちな大正~昭和初期の歴史だけど、こうやって紐解いてみるとなかなかに興味深い。
さて、国立競技場と言えば新国立競技場への建て替え問題。とりあえず、「今の」国立が陸上トラックが8レーンしかなくて中途半端な位置づけになっているらしいし、50年くらい経つから、まあ建て替えは良いんじゃないか、でもあのカタチはどうよ、とも思っていた。
この本ではその視点以外に、「建てた後、どう使うか」に、過去の実績を踏まえて書いているのが良い。さすがに国立で500試合もサッカー観戦した人。すなわち、現在5万人以上の(オリンピックスタジアムは8万人が必要)人が集められるのはサッカー日本代表戦くらいだが、ワールドカップでたくさん大規模スタジアムができたから、国立競技場を使わなくなっている。建て替えても陸上競技場兼用のスタジアムは使わないんじゃないか、と疑問を呈している。
なるほど、確かに最近は代表戦をしていないし、それであるからこそ、スケジュールに余裕ができた国立で、採算性を重視して、コンサートをやるようになったのだろう。
で、筆者の本命はなんとなく「8万人の野球場、3万人の陸上競技場」みたい。ただ、神宮球場に8万人も来るか?て考えると、8万人のサッカースタジアムが一番良いんだけど(イングランドにおけるウェンブリー的な役割 ((今の国立もその位置づけに近いと思う。J2プレーオフ決勝とか天皇杯決勝とか)) )、歴史的にあそこに陸上競技場は必然な気もするし、難しいねぇ… ただ、今の新国立競技場のプランがいろいろと甘いことだけは確実だな。
読み物としては大変に面白い本であるが、色々と情報不足な点もあるかと。明治神宮外苑競技場時代/アジア大会時代/東京オリンピック開催時/現在の空撮写真あるいは地図があると、過去から今の経緯が視覚的に分かってよかったかなと思う。
あと、最終章はこの本から骨子から少し外れるからか、情報が少ない。なぜ新国立の人数は8万人なの?IOCの条件にあるの?(無さそうだけどロンドン、北京の規模から出てきたのかな)、他の日本/海外のスタジアムの利用状況、という所は書かれていても良かったと思う。何せFIFAワールドカップでエコパ/宮城スタジアムと勿体ないものを作ってしまったのだ。てかこの二つどうすんだろ…
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